人生の節目を共に分かち合える場を創る クッポグラフィー バリスタの存在
クッポグラフィーの駒沢公園スタジオには、撮影の有無に関わらず、どんな方でも一息ついていただけるカフェスペースがあります。時には、結婚のタイミングであったり、お子さまの成長の節目など、人生の大切なときを過ごすお客さまも。
撮影の一日が心に残る思い出となりますように。
そんな思いで毎日お客さまを迎えている、バリスタの藤井茉莉花。
アルバイトとしてクッポグラフィーで働き始め、この春正社員に。クッポグラフィーにより深く関わっていくことを自ら希望し、バリスタチームのカフェマネジャーとして新たな人生をスタートしました。藤井が大切にしている“自分らしい生き方”と、クッポグラフィーでバリスタとして働く魅力を伺いました。
藤井 茉莉花(ふじい まりか)
駒沢公園スタジオ カフェマネジャー。秋田県出身。看護師としてリハビリテーション専門の病院で勤務した後、かねてより抱いていたもう一つの夢、コーヒーに携わる道へと進む。都内のカフェで経験を積み、個人活動でもイベント出店を行ってきた。コーヒーを通じてお客さまと深く関わっていきたいと考え、2023年 クッポグラフィー入社。この春から正社員になり、カフェマネジャーを任されている。
心に残ったバリスタの接客 クッポグラフィーのカフェとの出会い
ーーバリスタとしてクッポグラフィーで働きたいと思ったのはどうしてだったのでしょうか?
藤井:クッポグラフィーとの出会いは、横浜港北スタジオのカフェが最初でした。看護師時代、横浜港北スタジオのカフェに、友人と行ったことがあって。当時私は神奈川県に住んでいて、友人とゆっくりコーヒーを飲めるお店を近隣で探していました。住宅街の一角に、素敵なカフェがあることを知って立ち寄ってみたんです。バリスタの接客がとても心地よかったことが、心に残っています。
閑静な住宅街にある横浜港北スタジオ。現在は撮影のお客さま限定でカフェの営業をしている。
ーーそこから入社に至ったのは何かきっかけがあったのですか?
藤井:看護師は希望して進んだ道でしたが、いつか大好きなコーヒーに携わる仕事もしてみたいという思いも抱いていました。看護師を辞めた後、都内のカフェで働きながらバリスタの技術を学んで。その後、個人でもイベントに出店をしてコーヒーを淹れていました。
ーー思いが実現したのですね。
藤井:はい。あの居心地の良いカフェの会社の求人だ!とご縁を感じました。駒沢公園スタジオのカフェにも行ってみたら、同じように居心地が良くて。バリスタの雰囲気やお声がけが温かく、私もここで働きたいと思い応募しました。
撮影体験の始まりと終わりを担う バリスタの存在
ーーカフェは全国に数多あると思います。他店でもバリスタの経験がある藤井さんにとって、クッポグラフィーのカフェで働く魅力はどんなところにありますか?
藤井:クッポグラフィーは、カフェのみの利用も可能ですが、一番の特色は、お客さまの多くは撮影のために訪れていることです。スタッフには、撮影の日が心に残る一日となってほしいという思いがあり、カフェで過ごす時間も撮影体験の一部と考えています。訪れたお客さまにとって、その日最初に出会うのはバリスタです。そして、撮影が終わった後にほっと一息つく場所はカフェになります。今日が良い思い出として残るよう、バリスタは始まりと終わりを担う重要な立場にあると、いつも気を引き締めて朝を迎えています。
ーー単純にコーヒーを提供する場ではなく、撮影体験の一部なんですね。
藤井:そうですね。お子さまのハレの日の撮影であったり、結婚式の前撮りで来られる方など、人生で特別な日を迎えた方が多く訪れます。中には、ちょっと緊張している方も。
スタジオの入口でもあるカフェに入ったときに心地良さを感じてもらえれば、きっとその後は良い時間になると信じて、次のスタッフにバトンを渡しています。支度部屋でヘアメイクアーティストと衣装やヘアメイクを楽しみながら過ごすときを経て、撮影でフォトグラファーと話をしながら人生を振り返る時間になったり。バトンを繋いでいくうちに、幸せな時間が積み重なっていくようなイメージを持っています。最後にまた私たちバリスタがバトンをもらって、撮影体験の余韻を持ち帰っていただけるよう、お客さまを送り出しています。
ーーチームワークの最初と最後を担っているんですね。
藤井:そう思って仕事をしています。おめでたい瞬間に何度も出会えるカフェは、他にはない魅力です。自分自身も幸せのお裾分けをいただいているようで、そんな感情に触れ続けられるこの場所を気に入っていて。だからこそ、美味しい飲み物を提供して最後まで楽しんで帰ってほしいという思いは強いです。周りが騒々しかったり、空調が寒かったり、色んな負の要因は撮影をするときの気分に影響すると思います。お客さまの表情を気にかけて心地よい環境づくりをすることも、バリスタの大切な仕事です。
ラテアートの練習にも余念がない藤井。定期的にラテアートの大会にも出場している。スタッフが帰宅した後も、一人で残って練習をする日もあるそう。
自家製ワッフルはファンが多いメニューの一つ。ワッフルを食べるために週一で訪れるお客さまもいる。
クッポグラフィーでは、毎週月曜~水曜に、フローリストがセレクトした花を店頭販売している。バリスタは、フローリストから花の管理や包装、それぞれの花にまつわるエピソードを学び、お客さまに提供している。
看護師経験から学んだ 一人一人の人生に寄り添う尊さ
ーーところで、藤井さんはもともと看護師として働いていたそうですが、看護師からバリスタへの転身は珍しいキャリアですね。
藤井:中学時代、部活でバスケットボールをしていたので、けがをすることが多くて。リハビリをする際にも医療関係者の方々に支えていただき、リハビリの仕事に興味を持つようになりました。看護師もリハビリに携われる仕事の一つと知って、看護学校に入りました。
ーーリハビリの仕事にどのような魅力を感じていたのですか?
藤井:治療の効果を感じられたのはもちろんのこと、気持ちの面でもサポートしてくれたことが心に残っていて。けがが影響して試合でチャレンジができず落ち込んだ時も、心身ともに支えてもらったんですよね。とても嬉しかったです。
ーー看護師として5年間勤められたそうですね。
藤井:その間、一度も辞めたいと思うことがないほどやりがいのある仕事でした。私が勤務をしていた病院は、リハビリテーション専門の病院で。長期入院をしている患者さんもいました。
退院するまでの間、患者さん一人ひとりの背景を理解し、その人らしさを大切にする「個別性を活かした看護」が求められました。個別性を知るためには、患者さん自身のことはもちろん、ご家族のことも知っていかなくてはならなくて。知るためには関係を構築していく必要があるのですが、そこにやりがいを感じていました。
ーー患者さんやご家族との関係が仕事に大きく影響していたのですね。業種は違いますが、クッポグラフィーが一人一人のこれまでのストーリーを大切にしていることと重なりを感じます。やりがいを感じていた一方で、どうして辞めることにしたのでしょうか。
藤井:コロナがきっかけになりました。当時は病棟勤務だったため、自分が感染源を運ぶ可能性が高い状況下で。毎日、プライベートでも緊張状態が続きました。
ーー医療従事者の方々は本当に大変だったと思います。
藤井:コロナの流行が始まって1年が経つ頃、夜勤のときには、病棟の患者さんを一人で看護していました。濃厚接触者の患者さんも入院していて、かなりのプレッシャーを感じる日々で。一人一人の人生に寄り添えることにやりがいを感じていましたが、コロナ禍では、患者さんとのコミュニケーションに時間を割くこともできなくなっていました。
外出もできなかったので一人で過ごす時間が増えたとき、自分らしく生きるにはどうしたらいいのだろうと考え始めました。
そんなとき、以前からコーヒーに携わる仕事にも興味を持っていたことを思い出したんです。看護学生時代、勉強するときにはいつもそばにコーヒーがあって。上京するときに、きっとこれから暮らす街にはカフェがたくさんあって色々行ってみたい。ゆくゆくはお店で働いてみたい。そんなことを思っていたんです。
ーー患者さんそれぞれの生き方を尊重してきた藤井さんが、自分らしい生き方を考えた先に、バリスタの仕事があったんですね。
藤井:自分らしく生きるというのは学生時代から大切にしてきたことでした。進路で迷ったときに母に相談すると、いつも「あなたの思うようにやってね」と言ってくれて。そして、自分らしさが人生のテーマとなったきっかけが、看護学生のときに体験した父の死でした。病気で突然亡くなってしまったのですが、それを機に「父は最期まで悔いなく生きられたのか」「家族は自分らしく生きることができているのか」そう自問自答するようになりました。今も私の人生の軸となって、迷ったときにはここに立ち戻っています。
心を通わせていくことで生まれた お客さまとの再会
ーークッポグラフィーに入って2年が経ちますが、藤井さんが望んでいたお客さまとの再会の機会はありましたか?
藤井:たくさんありましたが、私がクッポグラフィーに入ってすぐの頃の妊婦さんとの出会いは、ここで働けてよかったなと思えるような出来事でした。
ーーどんな出会いだったのでしょうか。
藤井:まだ肌寒さが残る春先に、その出会いは訪れました。カフェが満席で、妊婦さんは外で待ってくださっていたので、白湯を渡しに行ったんです。それをずっと覚えていてくださって。お子さまが生まれた後も毎週のようにベビーカーで通ってくださって、仕事復帰されてからも土日に来てくださいました。今でもその関係は続いています。
ーー何度も再会できるご縁に恵まれたんですね。
藤井:カフェでの再会だけではなく、お子さまの1歳のお誕生日の撮影も予約してくださって。出来上がったストーリーブックを一緒に見て、お子さまの成長を喜べたことも嬉しかったです。「もう少しで2歳になるので、そのときも撮影をお願いします」と言ってくださっています。
ーーカフェから撮影体験のすべてに繋がったんですね。
藤井:それが何より嬉しくて。撮影体験のすべてにお客さまを橋渡しできるような存在にバリスタがなれたらと、日頃から思っていました。
普段、フォトグラファーやヘアメイクアーティストなどのスタッフにも、常連で来てくださっているお客さまのことを知ってもらいたくて話をしていますが、撮影も体験してくださることで、お客さまと撮影スタッフも直接お付き合いができるようになるので。
そういった関係になれると、お客さまにとってもカフェがより一層居心地の良い空間になると思うんですよね。例えば、私が勤務日ではない日にその方が来てくださったとしても、直接お客さまのことを知っているスタッフだからこそできるお声がけがあったり。お子さまの誕生日には、スタッフみんなでお祝いする楽しみも生まれます。
駒沢公園スタジオの入口にあるカフェ。撮影が終わった後にはここで好きなドリンクを召し上がっていただき、ゆっくりとした時間を過ごすことができる。
藤井:あるときその方から感謝の言葉をもらったときがあって。お子さまのご機嫌が悪い日でも、クッポグラフィーのカフェに来るとニコニコになるそうです。「困ったときはここに来れば大丈夫」と言ってくださいました。
ーーそれは嬉しい言葉ですね。
藤井:はい。安心できる居場所は私自身も必要としているので、そういった場所になれていることが嬉しかったです。
上京して都内で一人暮らしをしていたときに、近所にほっとできるお店があって。カフェ併設の日用品を販売するお店でした。ちょうど同い年くらいの店主の方が、お子さんの面倒をみながらお店を切り盛りしていて。その状況も楽しんでいらっしゃるような、あたたかな場所でした。私のこともすぐに覚えてくれて、毎回心地よく迎えてくださるんです。そこに行けば癒されて、いつしか自分にとって必要な場所になっていました。いつかこんなお店づくりをしたいとずっと思っていたんです。
お客さまの名前と話した内容を忘れないように、メモに残している藤井。撮影スタッフからの情報とリンクさせながら、再会の度に関係を深めていけるような下準備も欠かさない。
「すべての人が心の支えになる写真を持っている世の中をつくる」ことを目指して撮影をするクッポグラフィー。その人らしさや、ありのままの魅力を写真で届けている。初めてカフェに訪れたお客さまには、バリスタが撮影体験の魅力を伝えている。
チャレンジを応援してくれる職場と支えてくれる仲間たち
ーー今回、アルバイトから正社員になり、マネジャー業務に携わることになりました。正社員として働きたいと自分から申し出たそうですが、どのような思いがあったのでしょうか?
藤井:30歳を目前に控えた2024年夏、ふと自分のこれからの人生に目を向けたときがあったんです。クッポグラフィーで働き始めてから1年半ほどが経っていましたが、毎日が楽しくて生き生きと働くことができている自分に気が付いて。同時に、もっとクッポグラフィーにコミットして、撮影体験の魅力を広めていきたいという思いもありました。一方で、アルバイトの立場だと今後できることが限られてしまうかもしれないと思い、正社員になるチャンスがあるのかを人事に相談しました。やる気と意気込みを伝える私の話に親身に耳を傾けてくださり、この春から正社員としてマネジャー業務を任せていただけることになりました。
ーーアルバイトから正社員になるチャンスがあるんですね。
藤井:懐が深い会社ですよね。普段から、スタッフのチャレンジを応援する空気は社内全体で感じます。アルバイトの立場でも、カフェの企画を思いつくたびに提案することができていました。
ーー藤井さんが提案して実現したことはありますか?
藤井:愛犬とご来店のお客さまを対象にした「コーヒー豆 × わんフォトフェア」というバリスタ企画では、2回目を開催する際に、もっとお客さまが居心地よく過ごせるよういくつか提案をしてみたんです。
コーヒー豆、もしくはドリップバッグセットをご購入のお客さまに、愛犬のオリジナルフォトカードとデータ1カットをプレゼントする「コーヒー豆 × わんフォトフェア」。クッポグラフィーのコーヒーと撮影の両方を気軽に体験していただける内容になっている(現在は終了しているフェアです)。
ーーどのようなことを提案したのですか?
藤井:オリジナルフォトカードをお渡しするまでの時間をもっとゆっくりと過ごしていただけるよう、余裕を持たせた予約枠に変更をすることを提案しました。さらに、きちんと売り上げに繋がるような料金プランに変更することも提案して。初めてこのフェアを開催したとき、たくさんのお客さまが喜んでくださって、後日撮影を予約してくださったりと手ごたえを感じていました。一方で、あまり売り上げには繋がらない価格帯だったことが気になっていて。自信を持ってお届けできる内容だったので、今後も継続して開催できるように、売り上げにも繋げる必要があると考えました。
ーー持続可能なものにするためには大切なことですね。
藤井:いずれもアルバイトの立場で言っていいものかと悩みましたが…。社長の久保さんもこの提案を受け入れてくれて、すぐに反映してくださりました。
ーー次はどんな企画を考えているのですか?
藤井:まだ頭の中で構想中ですが、ラテアートの体験会を開いてみたいと思っていて。私自身日々研究を重ねている分野でもありますし、お客さまがラテアートを見た時に表情が緩む姿を見ながら、日常でも楽しむことができるといいなと考えています。
カフェをきっかけに クッポグラフィーの撮影体験を広めていきたい
ーー看護師のときに患者さん一人一人の生き方を大切にしてきた経験が、バリスタの仕事でも活かされているように、お話を伺っていて感じました。
藤井:あの頃の経験が今活かされているのであれば、これまでの人生をもっと好きになれそうです。どちらもホスピタリティの気持ちが必要となる仕事だと感じていて。お客さまへの気配りやお声がけは、入社直後から支えてくれた先輩バリスタの姿を見て学びました。クッポグラフィーのカフェには、小さなお子さまや愛犬連れの方からご高齢の方まで、様々なお客さまがご来店くださいます。その先輩は、どんな方でも安心して過ごせるように、ちょうどいい距離感で気配りができる人で。こうしてお客さまに関わることが必要なんだと傍で学べたおかげで、今の自分があると思っています。
バリスタの一人が海外でチャレンジするためクッポグラフィーを卒業する際に久保が撮影した、バリスタチームの写真。仲間同士の好きなところなど、日常では言葉にしづらい思いを共有する時間となった。この時間もこの一枚も、藤井の心の支えとなっている。
ーー藤井さんが今後やってみたいことはありますか?
藤井:クッポグラフィーの撮影体験を知ってもらうきっかけづくりを増やしていきたいと思っています。例えば、外のイベントに出店して、クッポグラフィーのカフェメニューを楽しんでもらうことで、写真や撮影を知る機会をつくれたらいいですね。
撮影がかけがえのない時間になることや、写真を見返せばいつでも蘇るその日の思い出の数々。私自身も体感しましたし、日々スタジオに訪れるお客さまの表情を目にしているのでその価値はよくわかります。今後きっと、心の支えになっていく撮影体験だということを。
明日も明後日も、そんな瞬間に関われる自分の生き方を、誇りに思っています。
取材・文:石垣藍子
撮影:クッポグラフィー
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